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No.18

あらしのよるに / 類司


 丸まって眠る首筋に、きみのあたたかな呼吸が一定の速度を保ってあたっては、こそばゆい気持ちと、少しだけ胸騒ぎがするような、嵐の前のような気持ちが湧き上がる。こっちの気もしらないで、と僕はいいたかったけれど、その気持ちをこらえて、丘の上に立ち、不穏な風を一身に受けて深呼吸する。抑え込んで抑え込んで、なにもないふりをする。本当は、君の手を引いて、嵐の中、ずぶ濡れになったままでキスをしたい。ひどい話でしょう。でもそんなことは、きっと僕が、一番嫌だから。気づいたら嵐の気配はなくなり、穏やかな風が吹いている。ほら、もう大丈夫。

9月 09, 2022