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No.38

脈拍 / 原藤


 柔らかな薄水の髪を眺めて、胸の中に抱え込むようにする。仄かに上がった気がする温度が自分の熱を流し込んでいるみたいだと錯覚して、このまま一つになりそうだと馬鹿みたいなことを考えた(この身体では、本当に一つになれるのかもしれないが)腕の中でまどろんだまま、原田さんは僕のこと見ていてくれますかと口にしたから、ずっと見てると言ってみる。うそでもうれしい。そう返した平助に嘘じゃねえよと言って、その柔らかな髪に顔を埋めた。
 見えない場所でうずくまっているその姿が見えている。平助はいつだって背筋が伸びていたから、伸びた背筋が密やかに身体を曲げたら、すくいとって大丈夫だと言ってやりたかった。ここにある、命のようなもの、がなくなるまでは。星の光となって散る様を眺めて、何度もその手を引いてやりたい。原田さん。原田さん、僕はここにいますよ。泣いてもないのに目元をひとすじなぞるから、涙がすべりおちようとする。沈黙は降る雪のようにやわらかい。まるで自分が幼子みたいで、俺は一言、わかってるよと言う。
11月 21, 2025