類司 司くんを起こすために、まずはじめにパスワードが必要だった。目の前に並ぶ入力項目は残念ながらノーヒントで、僕には見当もつかない。こんなもの、もしかしたら誰にもわからないかもしれないけど、僕にとっては知った気でいたことが簡単に覆される心地だった。あんなに近くにいたとしても。近くにいるからこそ、気づかないのかもしれない。もし仮にこのパスワードが解けたら、キスをして目覚めを待つらしい。僕のキスでも起きてくれる? そうしたら、きっと君を一番に抱きしめることができるから。7月 18, 2021