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No.9

類司


 僕は司くんのこと、「  」だと思ってた。

 でもそうじゃなかった。そうじゃないから好きなんだ、わかるよ。こんなこと、わかってたはずだった。でもちゃんと自覚した途端、眩暈がするほど恐ろしくなって、耳を閉じたくなる。お前が好きだと言われるのも、気持ちを受け取れないと言われるのも、どちらも恐ろしかった。わがままだってわかってる。僕は司くんに言葉を渡した、渡してしまったのだ。だからその分、言葉を受けとらなければならなかった。与えられた分は必ず返す。天馬司はそういう人だと知っていた。

「司くん」
「気持ちは、ままならないものだね」

 何も受け取りたくない僕のことを、馬鹿なやつだと君は笑うだろうか。

2月 06, 2022