No.20, No.19, No.18, No.17, No.16, No.15, No.14[7件]
※死を示唆する描写 誰もいない葬式場で、きみのことをそっと覗く。石みたいに硬くて冷たくて、もう熱をもつことのない身体。僕がきみの骨壷を持つことはない。僕はきみのなにものにもなれなかったから。僕はきみのずいぶん近くにいたけれど、それ以上でも、それ以下でもなかったんだ。ああ、僕はやっぱり、きみと最後を約束したかったのかな?最後の約束をしても、死んだきみの重さを知ることはないのだけれど。僕といる時間は楽しかったですか?僕はなにものにもなれなかったけれど、僕ときみの時間は、なにかであってほしいって、そう思うくらいならいいのかな。僕の瞳からとめどなく溢れるしずく、ふと人の六十パーセントが水でできていることを思い出す。これはきみへの花束で、永遠に枯れることのない、僕からきみへの光です。
9月 18, 2022
オレたち、ずっとうそをついていたから。なにが本当なのか、わからなくなってしまってた。でも、彼らが繋いだボールも、姉さんが握ってくれた手のひらのあたたかさも、全部本当だったから。オレ、今ここに生きているんだって。ちゃんとそう思えたから。お前のことも、うそじゃないってはっきりとわかったよ。オレたち、ちゃんとつながっていたのに、すっかりはなれてしまっていたね。
久しぶりに聞いた「自分」の名前もうそみたいに思えたけど、オレもおそるおそるお前の名前を呼んだ。うそじゃないって思いたかったから。きっと人の姿形をしていて、ちゃんと人のままでいるよ。そう思いたいと願って触れた手のひらはあたたかい。ああよかった、本当だ。
9月 18, 2022
丸まって眠る首筋に、きみのあたたかな呼吸が一定の速度を保ってあたっては、こそばゆい気持ちと、少しだけ胸騒ぎがするような、嵐の前のような気持ちが湧き上がる。こっちの気もしらないで、と僕はいいたかったけれど、その気持ちをこらえて、丘の上に立ち、不穏な風を一身に受けて深呼吸する。抑え込んで抑え込んで、なにもないふりをする。本当は、君の手を引いて、嵐の中、ずぶ濡れになったままでキスをしたい。ひどい話でしょう。でもそんなことは、きっと僕が、一番嫌だから。気づいたら嵐の気配はなくなり、穏やかな風が吹いている。ほら、もう大丈夫。
9月 09, 2022
うつくしくいきてね。それがどういうことなのか皆目見当もつかないものだったけれど、うつくしくいきて、とずっと言われていたから、ボクはずっとそうあろうとしていたし、鏡の前で話すお前も、ずっとボクにいいつづけていたよね。ボクは、今もうつくしいですか?凍てつくような寒い冬、止まない吹雪、ボクの中の永遠。全部、ずっと焼けるように痛かった。北ヶ峰のあの場所で、立ち止まったまま、時間だけが過ぎていく。鏡の中のお前は、いつかボクを、跡形もなく殺してしまうのかもしれない。でもボクはそれが許せなかったから。うつくしくいきる。お前の首を絞めることもできないまま、ただ痛みに耐えたまま、そうして夢の中、ボクは。
無能 / österreich より
イナズマイレブン 第45話 を観て
9月 08, 2022
ぼくたちは宇宙人でした。ぼくらは陽のもとであるがままの姿へと形を変え、今を生きることになりました。止まった時間は軋みながら動き出した。あるがままの、その姿の時間を。
忘れたいことも、忘れられないことも、忘れたくないこともたくさんあるよ。だけどオレたちは星の子らとして生きたこと、きっと絶対に、忘れることはない。たくさんの瓦礫、あのぼんやりとした石の光、あたたかな光、やさしいこころ。
ぼくは。ぼくは、私は、オレたちは、あなたを愛しています。遠き星エイリアより、愛を込めて。
9月 08, 2022
類の歌声が好きだ。セカイで歌をうたうとき、耳にやわらかな声が入り込んできては、周りを楽しませたいという感情が滲むのだ。その時は類自体もすごく楽しそうだったし、類がこちらを見て笑う時、楽しくてしょうがないといったような顔をしているので、オレも思わず楽しくて笑ってしまう。それはきっと、瞬きの中のような、夢の時間。
ネバーランドは永遠じゃない。そうやって、まるでわかっているようなふりをする。あと少しだけ微睡にゆだねていたいこと、類は許してくれるだろうか。
9月 01, 2022
心臓をなでるみたいにやさしくされて、甘やかされてひとつになる。それってどんな気分なんだろう。それを知るのがほんの少しだけこわかった。本当は、きみの隣で眠るだけでよかったんだ。僕はいつのまにか、怪物になってしまった。幾許かの暗い闇が僕の中を渦巻いている。きっと君はやさしいから、僕のことを抱きしめて、いいよ、と口にしてくれるんだろうね。そのことを考えるだけで思わず涙がにじんで、僕は立っていることさえも難しくなってしまう。司くんは当たり前みたいにして、いとも簡単に、僕を溶かして飲み込んでしまうから。許さないでいてください。胃の中で毒となった僕が、君の身体を蝕んでしまわないように。
8月 31, 2022