基緑
オレたち、ずっとうそをついていたから。なにが本当なのか、わからなくなってしまってた。でも、彼らが繋いだボールも、姉さんが握ってくれた手のひらのあたたかさも、全部本当だったから。オレ、今ここに生きているんだって。ちゃんとそう思えたから。お前のことも、うそじゃないってはっきりとわかったよ。オレたち、ちゃんとつながっていたのに、すっかりはなれてしまっていたね。
久しぶりに聞いた「自分」の名前もうそみたいに思えたけど、オレもおそるおそるお前の名前を呼んだ。うそじゃないって思いたかったから。きっと人の姿形をしていて、ちゃんと人のままでいるよ。そう思いたいと願って触れた手のひらはあたたかい。ああよかった、本当だ。
9月 18, 2022