久矢
つまりはそういうことだった。僕は多分またそうして矢後さんの死んでしまう未来をひたひたと想像してしまうことをやめられないのだと思う。僕が長い先のことを視ることはなかったとして、きっとそうしてその更新し続けている命を横目に、また一つ自分の中にある矢後勇成という男の命を消してしまうのだ。これは完全に僕の勝手極まりない悪い妄想でしかないことは僕自身も理解している。だけどそのいつかは必ずやってくるものなのだろうと僕は予見していた。突如として僕の目の前に現れ、そして今この隣にある命を本当に掻き消してしまうのだろうということについて、僕は少し、諦めに似た感情を持っている。
11月 08, 2020