主♂N
ふとした時に、Nは自分とは違って大人なのかもしれないと思うことがある。正確には、そうあるべきなのかもしれない、と思うんだ。自分よりも随分と大きい背が隣に並んでいるとき、Nのことを見上げては、まるで違う世界の人みたいにみえる。別に普段はそんなふうには思わないけれど、時折、本来あるべき様子と目の前のNがぐちゃぐちゃになって、アンバランスさに視界が歪む。パシオにはいろんな人がいるから、ずっと誤魔化されていたピントが少しだけ、くっきりと合うのかもしれなかった。本当は、きみとともだちになんかなり得なかったのかもしれないね。でもNがぼくの名前を呼んで笑いかけてくれるたび、ぼくはきみと対等なんだって簡単に錯覚できた。Nが何者であるかなんて、そんなこと考えなくたっていいって。ぼくはきみと同じ英雄で、きみはぼくのともだちだって、ただそれだけでいいって思えるから。不安定に並ぶぼくら、いびつかもしれないけど、きっとなにも、間違っていないよ。
3月 25, 2023