情景 / 暁山瑞希
ボクたちはなんでも知っていて、優しさに触れたところから花が咲いていくのがみえたから。ずっと言いたくなかった。花が咲いたら散っていなくなってしまうから。殺風景な雪景色、悴んだ手が霜焼けてあかぎれが滲む。酸化した赤が黒に変わる。変わらないままでいたかった。本当に、ボクはずっとそればかり考えていたんだよ。
いつかの日、絵名の手が同じくらい冷たかったことを思い出す。ねえ、ここまでくるのはこわかった?傷だらけの手のひら、涙まじりに灯りがともる。つぼみが芽吹いて花がひらく。ボクらの春はここにあるから。見慣れた景色がボクを呼んで、涙がほどけてひかりに消えた。
12月 25, 2024