類司
現実はそんなに甘くないらしい。忘れないでね、僕のこと。そうして夢の中で司くんに別れを告げるのが僕なりの悪あがきなんだけど、それも虚しく次の日には司くんは綺麗さっぱり忘れている。僕だけが覚えているなんて、なんだかすごく不平等だな。僕ばかりが、君のことを好きになってしまうことも。夢の中で出会う君が、僕と出会うことを心底驚くような反応も、翌日学校で出会った君が、夢も見ないほどの快眠だったことを告げるのもすっかり慣れてしまったけれど、それでも僕は心の中で、「せめて夢の中の君の記憶に残っていればいいのに」「この夢が、君と共有できていればいいのに」と思わずにはいられなかった。笑ってくれていいよ。だけど僕はそれくらい、君と心を通わせたいって思ってるってことさ。
2月 11, 2021