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No.11

帳が下りたら


 きみの俺を呼ぶ声が眩しくて痛くて、羨ましくて、だけどそれがきみらしくてすきだった。触れたつもりのきみの手はなにも感じないのに、熱を帯びた気がして気恥ずかしい。ヒロト?と呼びかけるきみの声に、なんでもないって誤魔化してしまう。なんでもないことが特別みたいになるのがいやだった。だって、俺たちようやく友達になれたのに。
 まぶたを閉じる。暗がりの中にきみを探してみる。まぶたの裏のきみにごめんをいっても、どんな顔をしているか全然わからなかった。ひとりきりだ。でもそれでよかった。夜においておくから、拾わないでね。きみには見せてあげないから。
 いつかの入れ物みたいにガムテープで留めて、そのまま火にくべて燃やせたらよかった。でも結局、それもできずにまた眺めてしまうのかもしれないから。バックアップなんていらない。なんでもいいから、はやく息の根を止めてください。

12月 24, 2024