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No.12

ギブス


 きみは許してくれないかもしれない。だけど、俺にはなくてきみにはあるものを知っている。証明なんかいらないほどの光がそこにあるでしょう。そんなこと言ったら、多分、きみはやめてよっていうんだろうけど。
 俺が燃え尽きてもきみがいると言ったら案の定、やめてよ、と苦く悲しい顔をする。自分がいるからという理由で俺が一歩引くことに強い抵抗があるらしい。リクは律儀に俺との間に深い溝を作り、たとえ話でさえも俺が犠牲を払うことを嫌がった。そんなかんたんに消えやしないことをわかっていても。結局、今回の答えも悪手だった。
 リクにはいつもどおりに振る舞ってほしいのに、俺にはそれがとてつもなく難しいことのように思えた。どうしたらみんなみたいに話してくれるのかわからなくて、でもリクが嫌がるような強引な手段は使いたくない。リクが俺に向ける笑顔には、1ブロック分のスペースがある。互いに傷つかないための予防線。踏み込みを避けようとしているのは明白だった。
 リクの手のひらは強く握られている。データの向こうのきみはどれだけの力を込めているんだろう。リク、と声をかける。きみのことを信じているから、これだけ賭けるって言えるんだけど。俺の隣には立ちたくない?と言い終わる前に、そんなことないとすかさず返ってきた。リクは、ただ楽しくやりたいだけなんだ、とこぼした。ヒロトの楽しいを壊したくない。光の奥にある丸みを帯びたそれは、多分リクそのものだった。

1月 1, 2025