流線
きみと歩く。指先で線をなぞるみたいに、いつもの遊歩道を辿っていった。この道をきみと歩いているのがなんだか不思議だった。誰とでも可能性はあるはずなのに、きみのことは良くも悪くも特別だったから。重ならないと思っていたのかもしれない。重ならないと思っている、のかもしれない。なんでもないことを話している。口先は軽いのに、なんとなくどこか重さを伴って歩いていた。きみへの「すき」は一筋縄じゃいかなかった。強く固く結ばれたそれを、奥にあるものを壊さないよう丁寧にほどいていく必要があった。きみは容赦がないように見えて、結構足音を立てない歩き方をする。靴の跡をおれに残さないようにするみたいに。そのやさしさがくすぐったい。輪郭をなぞられている。心臓にふれるきみの手が、脳裏に焼き付いて離れない。自分で許したはずなのに、きみと距離が近づくと自分でなくなる気がしていた。こんなに溶け合うなんて、知らなかった。
1月 26, 2025