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No.19

春の惑星


 きみのすきは大きすぎて、それを受けると大きな布に包まれてるみたいだと思う。部屋のカーテン、お気に入りのブランケット、そういった類と一緒にきみのすきが並んでいる。春風みたいにやってきて、あっという間に全身を包んだら内側の温度がゆるやかに上がっていく。うたたねだってかんたんにできるよ。俺のことをすきだというのが伝わってくるたび、俺はゆだねるようにまぶたを閉じる。もらってばかりだからなにかしたくて、でも俺がきみになにかをしたら加減が効かずに離れてしまうんじゃないかって。いつもそう。なにか間違って、俺のところに不時着しているのかもしれないとふとした瞬間に思って、いつの間にかひどい嵐がやってくる。泣いているのかもしれない。きみにだけはうまくいかない。ぬるい風がごうごうと吹いていて、きみの手の感触だけがたよりになる。過ぎ去ったらきみのことを抱きしめたいと思うのに、晴れ間が見えたらすぐさまきみに名前を呼ばれて、また返せないまま立ち尽くしてしまう。きみが目を細めて笑うのがすきなんだ。一言いえばいいのにね。また俺だけが、まどろみの中だ。

2月 13, 2025