とっくに融けてる
リクに一線を引かれていると気づいたのはいつだったか、はっきりとは覚えていないけれど、自分の足元からぴしり、と嫌な音がしたこと、それだけは鮮明に覚えている。ぜんぜん、きづかなかった。リクはみんなと同じ様に俺に接していたし、俺も変わらずにリクに接していたはずだった。揺れた瞳、わずかな一瞬に気づかなかったら知らないままだった。俺に触れるのは、そんなにこわい?
引かれた線を見つめて、じっと、静かにその時を待っていた。俺ときみの呼吸しか聞こえないようなその時まで。きみの名前が空気に溶けたら、きみがこわばるような息を呑んで、まるであのときみたいにこちらをみつめていた。線を越えて、氷上の上を歩く。もう一度、きみの手を握るために。
10月 24, 2024