球体
きみが声をひそめて秘密を打ち明けるみたいに耳元ではなすから、そのたびに内側から熱がこもって身体に力が入ってしまう。流されてしまいそうなんだ。意識も何もかも全部が。やわく角の取れたやさしさとか、ほんのわずか意地の悪いいたずら心とか。きみからのすきを一心に受けるというのはこういうことなんだと、地面に足をつけようとしていてもあっという間に耐えられなくなってしまいながら遠くの方で考える。他の誰かもこんな風にきみと対峙していたかもしれない。きっとしあわせなはずだ。きみは人を祝うことも祝われることも上手だから。きみの内側のやわらかなカーテンの向こう側に行きたかった。それを越えてまんなかまできてしまったけれど。ごめんね、しばらくここを出られないみたいだ。
3月 9, 2025