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No.31

a while


 無防備なきみの姿を見ては、わずか長いまつげの整った形を視線でなぞる。少し目を離した隙に寝てしまったらしい。きみの寝顔を見るのははじめてだった。規則的な呼吸音に耳をすませる。すう、すー、と小さな音が聞こえてきて、ここにきみがいると改めて認識する。信用の音だ。許されている気がして、心地いいような気恥ずかしいような感覚で内側をなでられる。どんな夢を見ているの。俺の前でも、悪い夢を見ないでいられる?浅瀬でひとりきみが立ち尽くしていたとする。できればきみの手をとるのが俺であればいいのにって、俺も図々しくなったよね。みじろぎをしたきみがまぶたを起こして、ずっと眺めていた俺の視線と重なった。寝ちゃったって居心地悪そうに言うから、いいよ、と言う。きみが安全でいられるなら、なんでもいいよ。

5月 17, 2025