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No.7

彗星


ぎこちない言葉が、態度が、行動が、
少しずつ噛み合わなくなる歯車が、
隣にいる時間が減っていくことが、
思わず顔を合わせるのをやめることが、
もはや同じ時間を共有しないことが、
少しずつ自分を息苦しくさせる、
はやく謝らないとと思うたびに時間が過ぎていって、
フレンド一覧のログイン履歴で足跡を辿る、
無情なオフラインの文字に避けられてるかもって思ってしまって、
伝える手段がひどく限られていることに腹が立って、
でもどの手段をとっても全部嘘に見えてしまって、
文章も声もダイバールックも全部張りぼてで、
がんじがらめになって、かんたんなごめんの一言さえも言えない。

こんなにきみのことを気にかけている自分に気づいて、
もう深い溝を作りたくないって思っている自分のこともわかったから、
必死なんだよ、全然、余裕なんてないから、
きみにこれ以上壁を作られたくなかったから、
どうやったら上手く言えるのかそればかり考えていて、
この前教えてもらったばかりの「ミカミ・リク」のメッセージ画面を見つめて、
何度も打ち直しては消してを繰り返す入力画面は微動だにしなくて、
いやになって瞼を下ろした暗闇が落ち着かなくて、
ベッドの中で蹲ってごめんをいう練習をする、
俺が「ミカミ・リク」の知り合いだったら違ったのかなってありもしないことを考える、

素数を数える、
意識が遠のく、
青い眼差しを夢にみる、
声にならない声でさよならをいう。
 
重たい腕を動かした先の、見慣れたレンガの建物、簡潔なメッセージの、
家の扉を開けて走る、先を越されている、
一か八かのきみの行動に思わず笑ってしまう、
きみのそういうところが風みたいに吹き抜けていく、
空から陽の光が落ちている、
割れたかけらが弧を描いて燃えていく、
昨日のごめんを渡しに行くから、だから、そこで待っていて。

11月 27, 2024