それから
コーヒーを頼んでいるきみは砂糖もミルクも何もいれない。俺は注文したコーヒーになみなみとミルクを入れる。角砂糖も一つ入れた。ドリンクバーでソフトドリンクを飲むような感覚でいるからきみが少しだけ大人びて見えて、俺に向き合ってくれるのがなんとなく子供扱いされているような気がしてくすぐったい。それが少しだけ遠く感じる。遠ざけていたのは俺かもしれないけど。それもやっぱり、子供っぽいのかもしれない。ヒロトって大人っぽいよねと言ったら、そんなことないよと少し困ったように笑う。この前もフォースのメンバーとガンプラのことで言い合いになったらしい。それは確かに、なんか意外。あれもこれもと聞いていたら、もう一つのビルドダイバーズのみんなは当然俺の知らないヒロトをたくさん知ってるんだとわかって、なんだかちょっとうらやましくなってきた。(そしておそらくいろんなことを逡巡した後に)全然大人なんかじゃない、と言う。そのとききみが何を考えたのかなんとなくわかって、はじめてちゃんと喋ったときのことを思い出した。遠くにいたきみが自分と横並びになった気がして少しだけ口元が緩んでしまう。ずるいやつだと思う。だけどそういう近いところにいるきみがかわいく思えてきて、でも一個上のお兄さんみたいに思えるきみもやっぱり好きだった。俺、ヒロトのこと好きだ。いつもだったら絶対に閉じ込めるのに、今ならいいか、と思えた。何にやけてるの、と少し訝しんでいるきみに、好きだなって思っただけ、と言う。きみは驚いた後よくわからないみたいな顔をしていたけど、すぐにゆるんでしまった口元を誤魔化すみたいにカップの縁をつけた。きみのカップに中身が残ってなかったのを思い出して、また少しだけ笑う。
2月 8, 2025