針葉樹林 / 原藤
最悪ぼろ雑巾みたいにしてくれたって壊れやしませんよ。そうやって一つこぼしたら、苦い顔をしておまえは俺がそんなことをすると思ってんのかと言う。思ってませんけど、そうしたいなら許してしまうとはっきり言うと、随分と長く感じる沈黙があった。原田さんが静かでいるとき、風もなにもなくただそこで鎮座する林のようで、僕はざわざわと木々が揺れるのを待つことしかできない。好きなんです、原田さん、僕、なにされたっていいんですよ。
そうやって思いながら待っていたら、原田さんはただ抱きしめて、んなこというなよと言った。閉じ込めるみたいにするから、苦しい、と言ったら、なにしたっていいんだろと言うものだから何も返せなくなってしまう。わかっている。僕の自由が委ねられているとき、原田さんならいともかんたんに僕の中を開くことができるのだ。でも結局僕のことをそんなふうにはしないだろうし、僕のことを食べてしまうのではと思ったときも、決して乱暴にすることはなかった。僕、原田さんのこと好きですよ。念を押して口に出したら、俺も平助が好き、と優しく撫でる。赤狼とか言われているのに細雪みたいな手つきだった。林の中で僕は背を預けて、ただゆっくりと瞼を下ろす。ああもう、僕の負けでいいですから。
11月 09, 2025